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【ネタバレ感想】ウインド・リバー 雰囲気づくり抜群の良作

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2018/07/28 シネマート新宿

あらすじ

雪に閉ざされたワイオミング州のとある土地。ここはネイティブアメリカンが追いやられた土地でもある。そこで若い女性の遺体が発見された。死因は10キロ走ったために起こった肺胞の出血が寒さで固まった末の窒息死。
捜査のためFBIの新人捜査官が派遣される。しかしよそ者は煙たがられ進まない。そこで地元のハンターへ捜査協力を依頼する。

感想

土地・背景を交えた雰囲気づくり文句無し

今回の舞台は『ファーゴ』が思い出される一面雪景色。主人公たちの行動はまず天候を見ながら進む。人間は雪を含めた環境に支配されている。その無力感が映画全体に漂い、舞台を最大限生かしきる。

そこにネイティブアメリカンという存在が絡まってくる。僕は日本人で教養もないのでその文化的背景を完全には分かりませんが、それでも白人とネイティブアメリカンの隔たりをビンビン感じさせ、ストーリーが一筋縄でいかないことに納得いく。

個人的・社会的背景の言葉ではない形での伝え方が絶品。肌感覚で分からせる演出が秀逸なので、突発的に大げんかになるんだけど、「なんでよ?冷静に話し合えばそんな難しい話じゃないじゃん」とは全くならない。なのでメインストーリーが弱めなのに退屈しない。

よそ者と住民の対比構造が綺麗

よそ者FBI捜査官はことごとく障壁に引っかかる。対して住民たちは「はいはいいつものことよ」って態度で至って冷静沈着に対処していく。この対比構造に拍車をかけるのが、この映画によそ者はFBI捜査官の1人しか出ていないことだ。これが素晴らしい。

土地も人も、それが正義だっていう支配がえげつない。なんせ映画ではたった1人の人間だけが異端なんだから。そして観ている我々もそっち側。綺麗に絶望的で受け入れるしかない。でもそれってもしこの舞台に実際行ってもそうなるわけで、同じ感覚を肌で感じられる今作は良作です。

沈黙と爆発の緩急がハンパねぇ

この監督は毎回そうらしいけど、今作も緊迫感の演出がハンパない。しーんとしてたはずなのに、いつのまにか何が起こるか分からない身体に力が入る状況に。
そして何か起こったときの音量が大きい。発砲音とかスノーモービルの音とか、雪原の静けさに慣れているからかめっちゃデカい。その緩急で見入っちゃう。没入感が強くてあっという間に終劇を迎えますよ。

まとめ

あーまた別世界に連れて行ってもらえました。この監督が脚本の『ボーダーライン』も『最後の追跡』も観ていないので、観ようと思います。
いやーひとつひとつの行動の重さがすごくて見入っちゃったなぁ。面白かった。

採点 84点