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【ネタバレあらすじ感想】スウィング・キッズ 文句なし!傑作!!

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2020/03/01 チネチッタ川崎にて鑑賞

またもや韓国映画

 

 

作品情報

 

 

あらすじ

時は朝鮮戦争後期。巨済島にあるアメリカ軍管理の捕虜収容所が舞台。新たに就任した所長のもと、イメージアップのため捕虜に自由を与え、ダンスチームを結成する計画を推し進める。

韓国軍の英雄の弟ロギス。四ヵ国語を話せるがその日暮らしをしているパンネ。妻を探して収容所に来てしまった一般人ビョンサム。ダンスに興味があるが栄養失調の中国兵士シャオパン。そしてダンスを教えるのは元ブロードウェイタップダンサーのアメリカ黒人兵士ジャクソン。

何もかも違う5人だが、クリスマスパーティーでの披露に向け特訓を進めるが…

 

登場人物

  • 主人公ロ・ギス ー DO演
    朝鮮軍の英雄の弟。役柄として踊りたい気持ちと、立場上アメリカ文化を嫌悪しなければならない狭間の演技がよかった。ただ演技がその2パターンだけで、めっちゃいいかというと、そこそこ。心底嬉しそうにダンスをするだけで十分しごとは果たした。

 

  • 4ヶ国語をあやつる通訳者ヤン・パンネ ー パクヘス演
    この人はとっても良かった。役にも恵まれているけど、最初は謎の役どころで、どんどん新たな面を見せてくれて引きこまれていった。今まで見た韓国映画の女性で最も好きかもしれない。それぐらい健気で芯も強く多様な顔もあり良いキャラだったなぁ。

 

  • 元タップダンサーアメリカ兵ジャクソン ー ジャリッドグライムス演
    この人はあまり感情の幅を出さず、淡々とした顔演技。でも踊らせたらナンバワン。そういう存在がこの手の映画には最も大事。今作でのタップダンスシーンの価値と興奮度を高める役割。争いを嫌う良い人加減が素晴らしかったなぁ。

 

  • 妻を捜す一般人ビョンサム ー オジョンセ演
    ふだんはへらへらしているのに、妻を探すシーンの迫真さ。今作はコメディ寄りだけど、戦争映画なんだと思い出させる。映画が軽薄な方向へ飛びきらないよう重りとなった大事なだいじな役どころ。

 

  • 栄養失調ダコメデインサーシャオパン ー キムミンホウ演
    一方、今作屈指、純度100%のコメデイな存在。もうね立ってるだけで面白いキャラ付けしているのに、動きがずるい。常に笑わせ続ける。途中の大雨のなかシャオパンとビョンサムの柵越しダンスバトルはずるすぎる。どこをどう取っても面白い。この存在はずるい。ただ、栄養失調はそこまで活かせてなかった印象。

 

ネタバレ感想

100点満点減点無しの構成

まず、五人チームであることに対して何の文句もない。この五人でないと生まれない感動。そのぐらい完璧なキャラ構成。朝鮮戦争の収容所って環境を生かした、多種多様な人選。

北朝鮮兵、中国兵、韓国一般人、通訳美女、師匠役のタップダンサーのアメリカ兵。
バックボーンも異なっているが、タップダンスの魅力に取り憑かれ突き進んでいく必然性。そりゃ推進力出てくる。

 

クライマックスへの推進力が右肩上がり

本番に向けて突き進む推進力だけじゃない。どんどん別要素が絡んできて、推進力が増幅されていく。

前半はタップダンスへの純粋な接近に絞ってるが、だんだんと戦時下のゴタゴタが絡まってくる。収容所という特殊な環境に、北朝鮮のキーマンが移送され反乱を計画する。主人公も加担するように強制され、渋々手を下すことに。

ここで大事なのは、統治するアメリカ軍が反乱に的確な対策を打って一度鎮圧する展開。ここがすーっと計画が進んで不穏な空気が漂ってくるだけではつまらない。しっかり策を打って解決を図る。

しかもその策のキーマンは、そこまで北朝鮮に傾倒していた実力者。祖母への愛から、右も左も投げ打ってアメリカに協力する。

そこに通訳美女とアメリカ兵の会話を差し込んで、「右や左なんてアメリカソ連が勝手に作った概念。ファッキンイデオロギー」とかぶせてくる。

これで戦時下のゴタゴタを取り払うと思いきや、今度は主人公の兄が収容され、兄への愛から北朝鮮に協力することを余儀なくされる。

かたや祖母への愛で北朝鮮を裏切りアメリカへ協力した内通者。かたや兄への愛からアメリカを裏切り北朝鮮のために反乱を起こすことになる主人公。

同じ愛を使った対比構造、、、なけるよなぁ

 

観客の心を掴む名言炸裂

こんな体制の綱引きに加担させられ、暗雲立ち込めるなか行う最終演技のタイトルが「ファッキンイデオロギー」

今作にずっと横たわる概念を、そのまんまの言葉で一番大事なところに持ってきた…満点!!

 

いろんなものを積み上げ、絡ませて始まる"ファッキンイデオロギー"はそりゃあ素晴らしいんですよ。これはセッションにも似た、もはやただのタップダンスではない。これこそが反体制の舞ですよ。心底の反戦映画。

 

ファッキンイデオロギーだけじゃない

それでいて、完璧なフィナーレである本番をこれ以上なく決めたあとに、練習シーン持ってきて今作の最高到達地点叩き出すんだよなぁ。こんな丁寧な作品ありがとうございます!!

ファッキンイデオロギーとステージで言うクライマックスに泣くんではなく、その後の練習シーンに泣いちゃう。もうあっぱれ。胸熱すぎて泣きじゃくった。

 

無駄な登場人物無し

キャラ使いも完璧です。メイン5人についてはもちろん100点です。妻を探すビョンサムの話にちゃんと決着をつけて最終公演に臨む潔いけじめっぷりも好感がもてました。ただこれだけでなく、メインキャラ以外の登場人物への愛もすばらしかった。

のっけからアメリカ兵が薄っぺらいギャラの安そうな俳優だけだなぁと思っていた。その中で、主人公に因縁つけてくる白人半グレアメリカ人兵士が出てくる。

初登場時はただ主人公の悪ガキっぷりを映したいだけかと思った。しかしその後もたびたび出てくる。

主人公とは犬猿の仲だが、こいつもダンスが好きで途中主人公チームと『ウエストサイド物語』的なチームダンスバトルをやる。

クライマックス前なんて、家族写真を使った主人公との心のやり取りシーンもある。そしてクライマックスでは主人公たちのダンスに心打たれた表情まで映してくれる。

一見モブかと思われたキャラを丁寧に育て上げ、大きな興奮の1ファクターに持ってくる。この丁寧さにもあっぱれ。

 

まとめ

あと、ダンスシーンがこれだけ多いのに飽きさせないカメラワーク。これって見事だと思いますよ。それぞれの場面によってダンス意味は異なっても、やってることは同じ。それを映し方ひとつで飽きさせない。とってもすごい。 

 

120分ずっと飽きさせない。ダレない。それでいて最高瞬間風速が勢いタイミングともに完璧。

 

今作は上半期ベスト級の一本です。年間ベストすらとるかもしれない。最低限ここまでの2か月では抜きんでてます。パラサイトよりも僕は好き。そのぐらいの熱量を持った傑作。ぜひ

 

採点 90点