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【感想】スーパー! スーパー完成度の高い、漢の生き様映画

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2018/08/15 鑑賞

スーパー!

感想を書きたい好きな映画第2弾

あらすじ

主人公のフランク。タッパはあるがブ男でハゲてていじめられっ子で、ハンバーガー屋で調理担当を行うパッとしない人生を送っていた。そんなフランクには二つの人生最上の瞬間がある。1つは逃亡中引ったくり犯の居場所を警察に教えたこと。もう1つは最愛の妻サラと結婚したこと。
ある日、妻のサラが姿を消す。必死で捜索すると、地元を仕切るドラッグディーラーと浮気していることがわかる。失意の中たまたまテレビで見たヒーローに感化され、自作ヒーロー「クリムゾンボルト」と名乗り町のちょい悪な人たちを片っ端からレンチで殴って成敗していくが…

感想

ただ主人公が暴走するだけ。それがいい。

この映画の最大の魅力は「結局ただ暴走するだけ」ってところ。いわば『タクドラ』と同じ方向性なのよね。ただの暴走に対してどれだけ応援できるかが映画の成否を決める

主人公はマジで冴えない。誰しも第一印象で直感的に分かる冴えなさ。そして分不相応な美人妻も見たらわかる、釣り合ってないやつやん。なので陰キャ主人公の人生最高の瞬間がそんな妻と結婚したことは心底理解できる。

高嶺の花を奇跡的に手に入れてしまったばかりに維持できない。妻はもっと良い妥当な男に浮気するし、主人公は人生全てを奪われてしまった。もう人生に意義が無い。主人公をどれだけの絶望に叩き落すことか簡単に想像つく。

絶望をトリガーに何かしらの形で爆発することはもう致し方ない。回避不可能。爆発の必然性がこれでもかと理解できる作りなので、爆発して暴走するだけの展開を前のめりに応援しちゃう。

爆発の仕方がだせぇ

そんな爆発が今作では自作ダサヒーローなのよ。ルックスもダサいし、やってる行為自体も低レベル。ぱっと見で分かる悪い行為を見つけると、赤く塗ったレンチで殴り掛かる。列への割り込み、ひったくり、役の売人、児童買春等々。

でも古今東西の一般人爆発ものってよく考えると行動自体はダサめ。一般人がやれることって爆発しても限られてくる。そんな普遍的な一般人のダサさを突き詰めると、ダサさだけでこれだけ見ごたえがあるものになる。今作は一般人爆発もの映画の極地といってもいい。

ダサいだけでなくとことん頭おかしい。前半は自分で自分を洗脳しちゃってるからもうフルスロットルで社会倫理をぶち壊していく。なんでもあり。ヒーローの自分は全くの別人で、暴行を知らん他人に見られようと関係ない。というかあんな内気な主人公がめっちゃアピールしながら番号丸見えのマイカーで帰っていく。

今までなんの取り柄も興味もエネルギーの矛先も無かった。あるとすれば妻との現状維持ぐらい。そんな男がヒーローになるんだと進んでいる時、間違いなくいっちばん輝いている。人が違う。これが生き様ということ。これが人間がひとつのことに盲信し取り憑かれる熱量。

あの主人公がここまで必死になれるということ。ダサくて程度が低くて何にも正しくないヒーロー像が、なんでか応援する対象になる。観ていて心地よく勇気付けられる。なんでなんでしょ。

ただのコメディを傑作に押し上げる相方ボルティ

主人公のヒーロー活動をいち早く嗅ぎつけ、ノリノリで相棒に立候補するリビー。

リビーは漫画ショップの店員で、主人公はただの客としてしか接点なし。で、主人公からはなんのアプローチもしていないのにゴリゴリに同調してくる。その結果ヒーロー憧れがすごすぎて自分も自作ヒーローボルティとなって行動を共にするんだけど、こいつがいろんな面でこの作品を傑作コメディにしてくれる。

終始主人公に対し、ヒーロー活動の後押しや励ましを行う無邪気な女の子。主人公を支えて、撃たれた時なんて銃創を手当てしてくれる。最後にはセックスすらしてくれるのだ。

ただここで同時に物悲しさすらを感じさせる。セックスするときはボルティとクリムゾンボルトって設定に過ぎない。なので嫌々な主人公に対し無理やりマスクを被せ逆レイプしちゃう。

人と人ではなく、爆発して行った行為の結果に好意を抱いているに過ぎない。『タクドラ』のラスト、タクシーに乗って来たベッツィみたいなもん。孤独や閉塞感から爆発した結果、ようやくリビーが心底寄り添ってくれたのに、それは本来の自分ではなく爆発後の幻影に寄り添ってくれているだけ。

もう主人公には前に進むしかない。その方向は人生最高の瞬間である妻を取り戻すしかない。この男には人生の選択肢が爆発するしかない。じゃなければ意義を失った腐った人生しかない。この追い込まれかた…異様に悲しいでしょ。なにがシャラップクライムだよ。かっけぇな

散り方最高ボルティ

この映画では主人公がダメージを食らうことが少ない。あんなに大暴れして社会秩序を乱しているのにも関わらずだ。中盤で足を撃たれるけど、相手の本部に考えなしで単身乗り込んだ結果で、代償としてはとっても小さい。なので見る人にとっては「あんな稚拙な行動とってもダメージの少ないご都合コメディなんだね」と軽く捉えられちゃう

そこで大事な役目を果たすのがボルティ。ヒーロー憧れがすごいので主人公以上に空想先行でやりたいことやる。「こういう攻撃したい!ヒーローならここでこうでしょ!」とか。そうしてガンショップでいろいろ買って主人公と本拠地に突っ込んで大暴れしようとする。

なんだけど大暴れそこそこに、主人公とボルティは敵にスパッと撃たれる。撃たれるぞーみたいなタメ無しに突然。で、二人は防弾チョッキを着ていて、ボルティなんて少し前に「重いなぁ~」見たいなこと言って主人公にたしなめられてる。主人公はその防弾チョッキに当たって命拾いするんだけど、ボルティに駆け寄ると防弾チョッキとか関係無しに頭をショットガンで打たれて、顔が半分になってるーー

なんとあっけなく、むごい死に方なんだろうか。あそこまで明るくすごい推進力で物語を引っ張っていたのに、こんな散り方あるかね。主人公なんてあんなに大暴れしてぜんぜん許されているのに、あんな可愛いボルティはテンションあげてすぐこんな終わり方かい。主人公の変わりに現実世界への代償を支払ったボルティ。

なんだろう。映画のフィクションと現実のバランスを上手にとってるというか、観客が「あぁそういうおもしろ世界観ね」ってギア入れていたのに急に引き戻される感覚。だからこそ主人公クリムゾンボルトの存在を手放しで「おもしろかっけー」で終わらせられず、生身の男のダサい爆発としてみちゃうのよ。

この感想書いていて、だれかに観てほしいならボルティの結末書く必要あるかなって悩んだけど、欲求に任せて書いちゃった。

 

まとめ

こうやってネタバレ気にせず好きな映画を言うときって、結局傑作の傑作部分をただ言ってるだけに過ぎないよねって思いながら言ってます。傑作すぎて言いたいから。にしても今回は要素を言い過ぎているなぁ。もうちょっとまとめたほうがいいですよ。

この映画の着地点もいいのよ。なんていうか完全な大甘ではなく現実的というか。結局ブ男の限界は指し示しつつも、最良を見つけたというか。最初から最後すべて含めて傑作です。

採点90点

 

ちなみに私の好きな映画ランキングはこちら

 

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