【感想】おとなのけんか 会話のアクション映画
2018/1/13 東京国立近代美術館フィルムセンター
東京国立近代美術館フィルムセンターにて開催中の「ソニー・ピクチャーズエンタテインメントコレクション」にて上映のこちらの名作を鑑賞。
はじめてのフィルムセンターだったけど、なんか色々やってました。
映画のポスターの企画展やってたり
日本映画の歴史 的な常設展もあります。僕は難しすぎてさらーと流したけど、映画好きは楽しめるのではないだろうか。
『おとなのけんか』は僕のオールタイム好きな映画ランキングにて長年10位を守っていた大大好きな作品です。(勝手に震えてろのランクインに伴い11位になっちゃったけど)
公開時は映画に全く興味がなく、ずっと家でしか観られてなかった。って思ってたら近代美術館にてイベント上映!さすが東京やで!
ちなみに別日なら映画史上最高到達地点であるタクシードライバーも500円で観られます。ぜひどうぞ
あらすじ
発端は子供同士のいざこざ。木の棒で顔をバチンってやっちゃって、歯が折れる軽傷。その事後処理に集まった被害者の両親と加害者の両親。その4人がだんだんイライラして怒り狂っていく映像を観る80分。
感想
会話の面白味だけをギュッと
この映画80分と大変短い。特に劇場で集中できる環境で観たら「えっ、もう終わり?80分経ったん?」ってなるぐらい面白味MAX無駄ゼロ。
これをあと10分伸ばしたら、その10分まるまる中だるみになっちゃうんじゃないかっていうぐらい、ノンストップでグイグイ加速して行く。
映画ってストーリー上のなんかしらの目的に向かって加速していくもの。タイムリミットとか誰か殺されちゃうとか何か成し遂げなきゃいけないとか。
でも今作はそういうのはない。というかストーリーがあってないようなもの。4人の登場人物が居るだけ。
なんだけど、その架空の4人が話してるだけでどんどん加速してどんどん引き込まれていく。めっちゃ面白いんだよなぁ。
おとなって腐ってやがる
ことの発端はこどものけんか。その事後処理のため集まった夫婦2組。初対面だし、事後処理を穏便に済ませようと互いに「おとなの対応」をする。冷静に理性的な会話をして終わらせようと。
しかし本音は別で、抑えきれず少しずつ漏れ出てしまう。だんだんとおとなの仮面が剥がれていき、ギクシャクした微妙な雰囲気に。
そこでとある偶発的なアクシデントが起こり大騒ぎ。闘いの火蓋が切ってとられた。そこから始まるノンストップ泥沼の戦い。
人はそれぞれ違いすぎる
面白いのは会話の流れによってそれぞれの立ち位置が変わるところ。人間なんて色んな項目で全部違うし、ポジショントークから離れられない。
夫婦だってそう。なんかしらの決め手でもって結婚という契約を結んで居るけど全く違う。
スタートは夫婦対夫婦で、喧嘩の被害者加害者の明確な立場がある。最初だし言わば理性的に夫婦を演じてるわけだ。
なんだけど、どんどん話がズレて全員が「もうおとなって縛りどうでもいいわ」的などっちらけになって、それぞれの個人として思想やモラルや生き方を露わに激論を展開する。これが面白すぎる。
部屋内での座り位置や行動、画面構成や顔面の表情などなどで、その時の力関係や共闘が伝わってきて映画的な部分もある。やっぱり名作だな。
あなたも誰かにムカつく
観ていて誰かに肩入れしたり、コイツムカつくな〜ってのが絶対あるのがこの作品。
僕はジョディフォスター演じるペネロペに毎回イラついちゃう。最後の最後まで自分だけは正しい人間だと思い続ける。
4人ともおとなって領域から転げ落ちて居る様子を観ている僕にとっては、いまの自分を認めず棚に上げて能天気な夫を罵倒するペネロペが毎回嫌いです。
ただ話してるのを観ているだけなのに、はじめて観た4人の人物像が如実に現れ、観ているあなたも人として誰かに反応してしまう。
傍観者という名の5人目の登場人物として画面内のファイトを観ていたらあっという間の80分よ。
まとめ
やっとスクリーンで観られて最高でした。こんな短くてこんな見応えがある面白映画。僕は他に知りません。
ガチンコファイトクラブ観ているような気持ちになってくる。
採点 95点